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LDっ子の受験報告#17 あさこ家のドタバタ高校受験記③

『LDっ子の受験報告』は、LDのある子ども達の受験体験談をご紹介するコーナーです。合理的配慮のコーナーで載せきれない、さまざまな方の受験までの道のりをご紹介していければと思っています。

LD長男のドタバタ高校受験記~その③ 合理的配慮申請の受験とその後~ 

さてさて、その②に引き続き

夏の迷子から、単願推薦の評定にもしっかり届いているThe学力相応のC校に志望校が決まり、個別相談も無事に済ませ、推薦入試は面接だけだから、とすっかり油断したところへ、突然降って湧いた謎の『面接シート』。

…募集要項にはそんなもの書いてなかったよね、と思いながら詳しく聞くと、どうやら面接時の「お助けアイテム」でした。

「学力もそんなに、のおとなしめな子は、緊張して質問にうまく答えられないことがある、なので事前に質問の答えを面接シートに書いて、面接官はそれを読み、内容を掘り下げて聞いていく。万が一うまく答えられなくても、面接シートに書いてあるものを見れば、本人が何を言おうとしていたのか分かるようにしてある。なので、このシート自体は評価対象にはならない」とのこと。

うーん、素晴らしい。さすが学力低めの子達が集う高校。とっても優しい。

…けど、長男、書けないんですわ。いや、書けたとしても先生方が読めないと思われます。

趣旨は完全に「良かれと思って」のお助けアイテム。なのに、それに対して合理的配慮を申請する我が家。
予想外の展開。

配慮申請のやり取りは中学と高校間で。親は蚊帳の外

面接シートに対しての合理的配慮申請の希望を確認され、次は必要な手続きを聞くターン。

と思ったら

「では、中学の先生に連絡を取って、お子さんの現状と合理的配慮の必要性について確認します。この先は、中学を通してご連絡いたします」と言われました。

…え?

そうなんです。これは本当に知りませんでした。長男が受けるC校の高校受験は、受けると決めた後はすべて所属中学が窓口らしく、合理的配慮の申請なども全て中学が間に入ってくれないと進まないらしいのです。

他校は分かりませんが、実際にこういう学校は結構あるようで、高校の先生がわざわざ中学に来て下さることも珍しくないとか。こちらが思う以上に中学と私立高校のやり取りは密です。

さすがに中学の先生は、本人にマイナスなことを高校には言わないけれど「配慮なんかやってないし、いらないですよ」とここで言われてしまったらThe END。日々、合理的配慮の実績を積んでいて本当に良かった、と冷や汗をかいた瞬間でもありました。

急いで担任に情報を共有し、担任がドキドキしながら待機してくれて、ドキドキがトキドキになって、そろそろ止まるかという師走も見えた頃。やっと担任と高校の間で連絡がつき、話が進み始めます。

その後、高校の先生が中学まで来てくださり担任と面談。細かく要望を聞いてくれて、中学からも現状の共有や、家から渡した検査結果などを開示して、合理的配慮が必要な旨を伝えてくれたのこと。

さらに後日、面談で不足した確認事項を電話で管理職とも話してくださり、その報告を担任からご連絡いただいて、これでやっと進む…とまた一息ついたら担任がひと言。

「高校の管理職がお母様と面談したいそうです」

・・え゛?!

受験前に高校の管理職と面談

―え?私ですか?本人がまだ合格してないのに?なぜ?

「入試前に入学後の配慮のご要望を伺って、対応できるかどうか、あとは本人が先方の学習環境的に無理が無いかどうか確認したいそうです。対応できない内容なら入学した後も申し訳ない展開になるので、志望校を変えてもらった方が良い場合もある、とのことで」

―…でも、ここで「対応できません」と言われても、ほかに行けるとこ無いんですけど…。

「それ、僕は知ってますけど、先方は知らないので(笑) アポ取って行ってください」

ガーン。まさかの、本人より先に私が面談という、またもや予想外の展開。

急いで要点を整理。面談で伝えなくてはいけないのは、こちらが求める合理的配慮は、要求ではなく先方の環境に合わせる用意があること。中学の手厚さが続くとは思っていないこと。ともに意見を出し合い妥協点を探す対話の用意があること‥かな。

当日は、持っていける長男のLD資料はすべて持ち、言われる前に「宜しければコピーどうぞ」と持ち掛け、人生でこんなに緊張したことはないかもしれない、というくらい緊張しました。

けれども、終始和やかに面談は終わり、最後には「では、入試で息子さん、お待ちしてますね」と言っていただけて、受験できることも合理的配慮を受けられることも無事に決定。

やっと、やっっと、外堀が完成!

その後年内に出願を終え、年末には合理的配慮の申請用紙も届き、中学の校長の印をもらって提出。

ちなみに、本人は学校で面接の練習を繰り返していて、私が「家でもやる?」と聞いたのですが、「学校で先生にやってもらっているから大丈夫」と絶対に、頑なにやりませんでした。

入試当日、そして高校合格へ

年が明けて迎えた入試当日。引率するかどうか悩み、トラブルがあったら私が後悔するからと、長男に頼んで高校の近くまで引率。

校内に入っていくのを見送って、駅に戻る道で滑って転びそうになったのを「コケたら落ちる」と踏ん張って関節を軽く痛め、そうこうしているうちに無事に入試は終了。

待機の会場では、面接シートに周囲が手書きする中で、長男は高校が用意してくれたタブレットで入力し、データで提出させてもらえました。他の子は1枚の紙を二人の面接官が引っ張り合い、体を斜めにしながら読んで面接が進む中で、長男のデータはそれぞれの面接官が手元のデバイスで見て取れて(これ、便利かも…)という先方の気づきの空気を感じたそうです。

面接での質問は「趣味は?」「中学で頑張ったこと」「高校でやってみたいこと」「入りたい部活」などだったらしく、中学のことを根掘り葉掘り聞かれるよりも、高校での希望を聞かれる感じ。このあたりの成績下位層ならではかな?などと思いました。

その翌日に合格発表。このあとクラス分けテストを欠席したら合格取り消しになるけれど、とりあえずは一区切り。

翌日、気が抜けて体調を崩す話はよくあるけれど、我が家は私でも長男でもなく、受験のピリピリに気を使いすぎた次男が熱を出しました。

入学から半年経って

そして入学から半年が経ち、長男は就学後初めて、元気に楽しく学校生活を送っています。「ノートは買わなくていい」と言うほど、学校がかなりICT活用を推しているおかげで、書字に関して日常生活に困りごとは無いそうです。

合理的配慮や支援のことは、入学当初は学校の組織図が私もよく分かっておらず、タイムラグが発生したり、意図が正しく伝わっていなかったりして混乱もありましたが、それも段々慣れてきました。

担任の先生も支援の担当者からは、出来ないことは出来ないとハッキリは言われるものの、長男のために前向きに動いてくれているのが伝わってきて本当にありがたい環境です。

A校に行けない、となった時には本当にどうしようかと思ったけれど、今、かつてないほど楽しそうな長男を見て、C校に導かれたんだな、この学校を見つけてよかった、と本当に感じています。

本人も先日「A校に行ってたら、たぶんもう辞めてるか、留年が決まってると思う」と学力相応な学校を選んでよかったと言っていました。

この先、また予想外のことがたくさん起こるだろうけれど、もう高校生なのでそろそろ本人に頑張ってもらいます。私は呼ばれた時だけサポートに入り、徐々に手を放して、遠くから見守るだけの状態を目指していきたいと思っている今日この頃です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

By あさこ

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