『LDっ子の受験報告』は、LDのある子ども達の受験体験談をご紹介するコーナーです。合理的配慮のコーナーで載せきれない、さまざまな方の受験までの道のりをご紹介していければと思っています。今回は都立入試における合理的配慮を経験された方のお話です。

読みと書きが苦手な息子の都立高校受験
現在、都立高校1年生の息子は、小学2年生のときに読み書きが苦手なLD(学習障害)と診断されました。また、散らかし放題のADHD、テニスが大好きなDCD(発達性協調運動障害)という特性もあります。
発達障害について調べるうちに、親の私にも多少ADHDの傾向があるのかもしれないと思うことがあります。
仕事と家庭、息子のLDへの対応でいっぱいいっぱいでしたが、そのときにできることを積み重ね、親子でさまざまな壁を乗り越えてきました。今では、息子は毎日楽しそうに高校生活を送っています。
ここでは、息子の成長と高校受験までの道のりをお伝えします。
1. 幼少期〜小学校生活:手探りの学習
幼少期の違和感
小さな頃から絵本を読んでもらうのは好きでしたが、自分で読むことや、保育園でのお手紙交換には興味を示しませんでした。
周りのママ友からは「男の子なんて読み書きが遅いのが普通だよ」「そのうち自然に覚えるから大丈夫!」と言われました。一人っ子ということもあり、「男の子はそんなものなのかな」と自分に言い聞かせていました。
小学校入学前になっても自分の名前を書けず、公文に通い始めました。そこで「この子、本当に文字が定着していないんだ!」と気づきました。
LDの診断を受けるまでは、国語のプリントに親子二人三脚で長時間取り組みました。でも、うまくできないと、つい怒ってしまうことも多くありました。
振り返ると、一番つらかったのは息子本人だったはずです。それなのに、できないことを責めてしまったことを、本当に申し訳なく思っています。
運動の苦手さの理由
文字だけでなく、運動面でも「どうしてだろう?」と思うことがたくさんありました。
走るのがとにかく遅く、年中から通い始めたスイミングも、ほかの子たちが進級する中、「バタ足」のテストに合格したのは小学2年生のときでした。
疑問が解けたのは、療育のOT(作業療法士)の先生からDCDという言葉を聞き、息子にもその特性があると指摘されたときでした。
「本人は怠けていたわけじゃなくて、精いっぱい頑張っていたけれど、身体がついていかなかったんだ。そして、身体の土台が十分にできていなかったため、文字を書くときの姿勢や手指の動かし方もうまくいかなかったんだ。」
そう思うと、心から納得できました。
かけっこ教室や空手、テニスなどに挑戦する中で、見事にハマったのがテニスです。嫌なことは徹底してやらない息子だからこそ、心から「楽しい!」と思えるスポーツに出会えたことは、本当にラッキーだったと思います。
検査と手探りの学習
当時はインターネットで得られる情報も少なく、担任の先生からは問題ないと言われていました。そこで、SC(スクールカウンセラー)の先生に相談し、検査機関を紹介していただき、小学2年生で検査を受けました。
LDの診断を受けたことで、息子にとって、授業や読み書きがどれほど高いハードルなのかを理解できるようになりました。
漢字の練習回数を調整したり、音読の代わりに音声教科書を聞いたりするなど、宿題の負担を減らせるよう学校に合理的配慮をお願いしました。
提出物やプリント類は行方不明になることが多く、ホワイトボードに予定を貼る工夫も長続きしませんでした。そんな中、Alexaのリマインダーだけは今も活躍しています。

2. 中学校生活:自分なりの工夫と学び方の選択
中学校に進学すると、定期テストや内申点など、考えなければならないことが一気に増えました。
知識があっても「書いて表現する」ところでつまずき、点数に結びつきませんでした。提出物を忘れたり、小テストで思うように点数が取れなかったりして、内申点を上げるのは難しかったです。
授業はプリントの穴埋め形式が多く助かりましたが、感想文やレポートには苦労しました。
毎週提出するレポートは、アプリ「Goodnotes」にスキャンしたプリントを取り込み、文字入力や写真の貼り付けで提出できるよう、先生に許可をいただきました。
「とにかく期限に間に合わせること!」を優先するうちに、本人もコツをつかんでいきました。
授業中のノートにもPCの使用を勧めましたが、本人は手書きにこだわっていました。
理由を聞くと、「ひらがなでも手書きの方が早いし、机でPCが邪魔になる。手書きをして文字に慣れるようにしているんだ。」とのことでした。
親が良かれと思って先回りしても、本人が納得できなければうまくいきません。息子なりに学び方を考えているとわかり、本人のやり方を尊重しながら、必要に応じて先生に相談することを大切にするようになりました。
また、私立高校の受験に向けて取得した英検・数検3級は、本人の自信にもつながりました。内申点では英語が「2」でしたが、資格取得は大きな励みになったと思います。
3. 中学校生活:合理的配慮を求めて
本人主体の配慮交渉
小学生の頃は私が先生に相談していましたが、中学校では最初の三者面談で、希望する配慮をまとめた資料を持参して説明しました。
その後は本人と担任の先生が話し合い、結果を本人と私に電話で報告してもらう形へ移行できました。息子は、自分にできることや難しいことを説明し、希望する配慮を伝えられるようになりました。
別室受検や時間延長についても、自分が集中できる時間を考え、教科によっては通常の時間で受けられるようになりました。
定期テストでの配慮
中学1年生の頃から、「都立高校受験で合理的配慮を申請したいので、実績を積み上げたい。」と学校に伝え続け、少しずつ配慮が認められました。中学3年生ではiPadの使用も許可されました。
受けられるようになった配慮は、次のとおりです。
- 別室受検・時間延長
- ルビ付き問題用紙
- ひらがなでの解答許可(教科による)
- 国語の漢字問題の調整(書き問題を減らし、読み問題を増やす)
- 英語のiPadによる読み上げ

4. 高校選び:本人に合う環境を探して
高校見学と個別相談
息子が高校に求めていた条件は、普通科であること、テニス部があること、通学時間が1時間以内であること、そして可能であれば合理的配慮を検討してもらえることでした。
親としては、「特にこれに興味がある!」「この教科は負けない!」というものがなかったので、都立でも私立でも、本人が行きたいと思える高校に進学し、そこで考えればいいと思いました。
学力や通学距離などの条件から、都立高校は候補が1校しかありませんでした。まずは私だけで私立高校の合同フェアに参加し、ICTの活用状況やノート提出の有無、赤点を取った場合の救済措置などを確認しました。
感触の良かった私立高校の説明会には息子と参加しました。本人も学校の雰囲気を気に入り、合理的配慮について尋ねると、「できる限り対応しますよ。後日、中学校に具体的な配慮内容を確認しますね。」とのことでした。
しかし、その後、高校側が中学校に聞き取りを行った結果、「現在受けている配慮を実施するのは難しい。」と伝えられました。
読むことに時間がかかる息子にとって、時間延長はとても重要でした。「時間延長がないと、頑張った成果が出せず、やる気がなくなる」と本人が判断し、第一志望を都立高校に切り替えました。
都立高校にも個別相談したところ、通常授業での対応は難しいものの、定期テストでは可能な範囲で対応するとの回答をいただき、ほっとしました。
模試(Vもぎ)での配慮申請
塾ではVもぎの配慮申請を受け付けていなかったため、毎月、個人で電話申し込みをして受検しました。
国語では親による読み上げ、英語ではiPadによる読み上げの配慮を受けました。同じ会場で受検を重ねるうちに、スタッフや試験官の方とも顔なじみになり、安心できる環境で本番に向けた練習ができました。

5. 都立高校入試:合理的配慮を求めて
配慮申請の却下と再申請
都立高校入試に向けて、次のような合理的配慮を申請しました。
共通の希望
- 別室受検、時間延長
国語
- 長文問題のボランティアによる読み上げ
- 漢字へのふりがな付与
- 漢字問題を読みのみの10問に変更
- 時間延長1.3倍(50分から65分)
英語
- iPadを持ち込み、UDブラウザというアプリで長文を読み上げる
- 時間延長1.3倍(50分から65分)
理科・社会
- 漢字へのふりがな付与
- 時間延長1.2倍(50分から60分)
ところが、決定通知では「漢字問題を読みのみの10問に変更すること」と「英語のiPadによる読み上げ」が却下されていました。
高校や教育委員会に理由を尋ねると、「東京都では前例がない。」とのことでした。
そこで、申請支援に協力してくださる方に、iPadの活用方法や他県での実績がわかる資料を添えて、再申請をしました。それでもハードルは高く、時間も限られていました。そのため、支援者の方から、漢字は選択問題への変更、英語の読み上げは介助者による代読への変更をご提案いただきました。最終的には、前例のあるこの方法に変更することになりました。
代読ボランティアとの準備
代読者を探すのも簡単ではありませんでしたが、親の会を通じて、国語と英語で2名の方にお手伝いいただけることになりました。
Zoomなどで事前に打ち合わせを行い、「問題文と本文のどちらを先に読むか」「読み上げるスピードはどのくらいがよいか」などを確認しました。練習やVもぎでも読み上げを試していただき、息子の希望に合わせて調整してもらえたので、安心してお任せできました。
試験当日、息子は「緊張していたけど、とてもやりやすくて、焦りがなくなった」と話していました。息子を支えてくださったお二人には、本当に感謝しています。

(↓読み上げボランティアをしていただいた方がnoteに記事にしていただいていました。)
6. 高校生活:新たなスタート
本人が自分のペースで努力を続けた結果、無事に都立高校に合格することができました!
合格後、すぐに高校へ入学手続きに行くと、先生から声をかけていただき、これまでの合理的配慮や今後の対応について話すことができました。対応が早く、驚いたことを覚えています。担当の先生の理解があったからこそだと思います。
高校1学期最初のテストは、まず様子を見るため、配慮なしで受けることになりました。これは中学校でも同様でした。息子は赤点を心配していましたが、無事に回避できました。
その後の期末テストでは、中学校とほぼ同様の配慮を受けられるようになりました。本人によると、通常授業では特に配慮の必要はないとのことです。
おかげでテストも全日程別室で落ち着いて臨め、友達と遊んだり、部活動や好きなVTuberを楽しんだりしながら、充実した高校生活を送っています。
7. おわりに:これからの歩み
高校に入学してほっとしたのも束の間、夏休みには大学のオープンキャンパスへ行く宿題がありました。もう次の進路について考えなくてはなりません。
幼少期から自分の特性と向き合い、できることを増やし、自分に合った付き合い方を見つけてきた経験は、息子にとって大きな糧になっているはずです。
そして、「嫌なことはやらないけれど、大好きなことには全力になれる」という素直さや、好きなことに向かって真面目に努力できる力は、大きな武器になると信じています。
これからも、本人が自己理解を深め、興味のあることをじっくり考えられるように見守りながら、必要な部分をフォローしていきたいと思っています。
by KC