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LDっ子の受験報告#12 都立高校入試の合理的配慮  by R.S

『LDっ子の受験報告』は、LDのある子ども達の受験体験談をご紹介するコーナーです。合理的配慮のコーナーで載せきれない、さまざまな方の受験までの道のりをご紹介していければと思っています。

目次

はじめに

都立入試受験体験です。

息子は板書ができない、成績が悪い、書けない、というところから小学校3年生のときに「何かしらの障害がありそう」とわかり、5年生でLDとADDの診断を受けました。

障害については5年生のときに主治医から話してもらいました。

障害についての理解は早かったですが、一貫して「ぼくは大丈夫。みんなと一緒の方法がいい」と合理的配慮は跳ねのけました。読める字は書きますが、書字に時間がかかります。読字にも人より少し時間がかかりますので、板書はほとんどできません。

小学校からの引継ぎの資料を中学に提出し、入学後はすぐに担任の先生にLDがあることと、今は本人が合理的配慮は何も望んでいないがいずれはお願いすることもあると思う、ということを伝えました。

中学1年生のときは、テスト前の課題提出に追われました。平日にやらないからではありますが、土日に7時間机に向かって仕上げても、テスト勉強は何一つできない状態で定期試験を受けていました。

2学期あたりでようやく本人が「つらい」と言い出しました。何かしらの手立てが必要だと認識したようです。

読める字ではあるけれど、これを書くのに時間がかかります。

ひらがなも混じります。スペルミスも多いです。

中学校での合理的配慮

通級指導内容が、対人スキルメインで、「タイピングの練習もできますよ」という感じだったので、本人と相談して通級はしないことにしました。

同じ中学の上の学年に、定期テストで時間延長やルビ振りが必要な生徒がいたそうで、担任の先生から「必要があれば言ってください」と言ってもらっていました。

中1の2学期期末あたりで、本人の受け入れが整いルビ振りをお願いしました。

ただし、科目によっては「ルビ振りすると最後の設問が消えていた」とか「ルビ振りの結果、用紙が大きくなる」といったことが起きました。これについては、不具合だとは伝えず本人の希望もありそのまま受け入れました。

それ以降は、試験前に担任の先生と相談をして、ルビ振りや時間延長をお試しする感じで少しずつ取り入れました。

本人にも「都立入試の際に必要になるから、意地を張っている場合ではない」と話し、定期試験対策だけで本当に少しずつですが、本人の受け入れも進みました。

親の会で、過去に都立入試で「漢字選択問題」で受験した人がいるという情報を得て、ぜひそれを申請したいと担任の先生に相談をしたのは中3のときでした。

担任の先生は、「実際の問題があれば、国語科の教員も作れると思う」と言ってくれたので、入手したコピーを学校に提出して、中3の定期試験の国語のテストで「漢字選択問題」を実施してもらいました。

ちなみに、子どもの通った中学校の先生方の認識は「中学校で実施した合理的配慮しか配慮申請できない」というものだったのですが、先輩ママさんによるとそのようなことはないそうです。

志望校が決まるまで

本人は「受験は怖い」というものの、いまいちピンときていないので、中2の夏休みに高校見学に参加しました。ただ、私自身が高校の情報に疎いので適当にざっくりと選んだ都立高校3校を見に行きました。

  • 家からバスや自転車で通える高校A
  • 家からバスや自転車で通える高校B
  • 親の会経由で情報を得た定時制の高校C

実際に子どもと学校を見に行ってみて、子どもが感じたことを大切にしようと思いました。

A高校の感想

「今日いた先輩たちがさ。『偏差値なんか関係ない』っていうじゃん。そんなこと言えるやつは、偏差値高いんだよ。たぶんあそこ、ぼくは無理だよ」

B高校の感想

「ねぇ、底辺校ってネットに書かれてるんだけど。ただ、一番親近感ある。」

C高校(定時制)の感想

「ぼく、ちょっとなんか・・・違うような気がする」

中2はこれくらいの情報収集で、結果的に良かったのかなと思います。

後から振り返って、志望校決定に影響したように思う中3の時のイベントは、3つあります。

  • 高校の先生の話を聴く会(中学校行事)
  • 高校見学(中3)
  • 高校説明会

「高校の先生の話を聴く会」という学校行事では、近隣の高校の先生が中学校で講話してくれます。この時来られた工科高校の先生の話が面白かったと帰ってきました。本人が魅力を感じたポイントは、「資格が取れる。」「専門的な学びがある。」「勉強が苦手だった子も多く来ている。」「就職」です。

⇒ただ、何の勉強をしたいのかはわからない。と言っていました。

このとき、何が好きなんだろうといろいろと考えたようです。生き物好きで理科が好きというのは自覚していました。

中3の夏休みの高校見学は、中2の時よりも現実味を持って本人と共に、実際に受験しそうな高校を選びました。

普通科は、成績と通える範囲で高校が絞れてきました。また、工科高校に興味があるので、工科高校フェスタで情報収集しました。ここで、大学進学を目指す工科高校の存在を知り、理科が好きで大学進学希望しているという本人の希望についても明確になってきました。

実際に行ってみて、設備と説明に心をわしづかみにされていました。

私立高校選びには苦慮しましたが、成績でおおまかに1校に絞れたので、もうそこに決めました。見学に行き、生物の模擬授業で心をわしづかみにされていました。

第一印象で心をわしづかみにされた工科高校に志望校を決めたのですが、本人もいろいろと調べます。ネットで検索すると、偏差値が低いと揶揄されており、そこでずいぶん迷ったようですが、最終的に、第一印象と大学進学を目指したいという思いで、決めたようです。

都立入試の合理的配慮申請について

このころには子ども本人が本気なので、「本気の本番で力を発揮するために必要なこと」として合理的配慮をとらえていました。

  • 全科目ルビ振り
  • 国語の漢字は選択問題
  • 英語のみ10分の時間延長

を申請しました。

推薦入試

12月初旬、志望校決定後に高校の入試説明会に行き、そこで

「本気で本校を受けたい受験生に来てほしいから、推薦で4割取ります」と聞きました。

推薦と一般の割合は、学校側が決めるのですが、工科高校は最大4割推薦で取れるとのことでした。

 作文が苦手なので、推薦はまったく考えていませんでしたが、推薦まで1か月ちょっとしかないけど、チャレンジすることに決めました。

学校に推薦のお願いを急いで伝えました。作文を何とかしなければと対策を練りました。

 作文対策はまず苦手意識を取り払うことに努めました。親の私も「入試の作文は、型を作ってしまえば行ける!」と、言い続けるうちに、いけるんじゃないかという気になってきました。

 志望校が過去の作文テーマを公開していますし、インターネットで検索すれば志望理由の作文の型のようなものはたくさん出てきました。それを真似て私が書いたものを型にして、本人が書いてみて、それを学校と塾で添削してもらいました。繰り返すうちに、自分で時間内に書けるようになってきたそうです。

 中学での添削は優しく修正が入りましたが、元の型を作った私が恥ずかしくなり程に塾ではかなり辛口に修正が入りました。この時点で入試まで日がない状態でした。親の私は普段の作文の苦手さを知っているので、原稿用紙に字が埋まっているだけで本気で「すごーい!」と感嘆してしまう状態でした。自信をつけるためにそれも重要!と割り切って褒めちぎりました(笑)。

【漢字間違いに苦慮していました】

面接対策はほとんど学校にお任せでした。

中学校での面接練習(副校長と担任の先生が実施してくれました)1回してもらい、それをもとに家で練習しました。親は「すごーい!」の精神で、ほとんどダメ出しもせず、もともとのコミュニケーション力を信じて、そこには自信を持っていけと背中を押しました。

本番は、特に面接でずいぶん緊張したそうです。

1人で帰っている帰り道に合流したのですが、しょんぼりしていました。

「練習で、絶対に言うなって言われたことを言っちゃった・・・。面接官に鼻で笑われたよ・・・一般入試に向けてがんばるよ。」

と、話していました。

結果は合格していました。もしかしたら初めての勉強での成功体験でした。

推薦合格により、一般入試に向けて申請していた合理的配慮は使うことはなかったのですが、申請した全てが認められていました。

我が家の受験体験は、以上です。

何かお役に立てるところがありましたら嬉しいです。

                 by R.S


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