MENU

静岡県袋井市 ことばを育むプログラム

カラフルバードの地域メンバーが日々集めている地域情報の中から、静岡県袋井市の支援、ことばを育む取り組みについて紹介します!

静岡県袋井市ってどんなところ?

市の概要より引用
袋井市は、静岡県西部に位置し、東は掛川市、西は磐田市、北は森町に接しています。
(中略)
令和2年国勢調査(令和2年10月1日現在)による袋井市の人口は、87,864人です。高齢化率は、24.3パーセントと県の高齢化率29.8パーセントを5.5ポイント下回っています。また、平均年齢も、44.9歳と県の平均年齢48.4歳より3.5歳若く、県下でも指折りの「若い」まちとなります。」

袋井市は、比較的若い年齢層の多い街なんですね!

「ことばを育むプログラム」って、どんな取り組み?

袋井市では、2011年(平成23年)から毎年、市内の小学校1年生全員(小学3年生の一部)を対象に、ひらがなを読むことがどのくらいできているのかを調べる袋井市版「ひらがな読み調べ」、「ことば遊び」等の支援が実施されています。公益財団法人博報児童教育振興会第44回「博報賞」特別支援教育部門において受賞された取り組みです。

この記事では、カラフルバードの地域メンバーが集めた資料の中から、具体的な内容を一部抜粋して掲載します。

メモ      

メモと書いたフセンの下には、大まかな要約や補足などをまとめています。
全て余さずに掲載することは難しいため、ぜひお時間がある時に各資料も読んでみてください。

広報ふくろい

  • 平成27年(2015年)10月 No.175
    この号は、発達障害全般についても取り上げられており、「理解する」「気付く」「配慮する」「相談する」の項目に分けて説明が掲載されています。

引用
8ページ 「「ぬっく」ってどんなところ?」より
~子育ての応援団!0から18歳までをトータルサポート~
子ども支援室「ぬっく」は、子どもの心身の健やかな成長に資する相談・支援機関として、平成25年4月に組織化された子育て世代の応援団です。

(中略)
すべての子どもを対象とし、教育・保健・福祉などの分野が連携して子育てを応援する機関で、県内でも先進的な取り組みとなっています。

9ページ「ことばを育むプログラム」より
子どもの学習活動の基盤を支えるために「ことば」に焦点を当て、乳幼児期からの発達に沿った取り組み(実践)を明確化した教育支援プログラムです。

引用
8ページ「お悩みQ&A」より
【Q】勉強についていけなくなってしまった。特に書くことが苦手で困っている。
【A】書くことが苦手なことは、本人にとってつらいものです。学校の…
(つづきは掲載ページで)

9ページ「「ぬっく」での支援の一例」より
【相談】うちの子は読み書きが苦手で、宿題がなかなか進みません。授業の内容もよく分かっていない様子・・・。最近、学校へ行くのを渋るようになってきてしまいました。
【対応】小さい頃から今までのご家庭での様子を伺う一方、学校を訪問して授業中の様子などを参観しました。また、…
(つづきは掲載ページで)

メモ 子ども支援室「ぬっく」について

  • 0~18歳までのすべての子どもが対象。子育てに関する相談・支援機関。
  • 保育士、保健師、教諭、臨床心理士などの資格や経験をもつスタッフで構成されている。

  • 平成28年(2016年)11月 No.188

引用
13ページ「お知らせピックアップ」より
「学習の基盤となる「ひらがな」の読み書きに着目」
ひらがなは学習の要です。特にひらがな読みに困難を抱えると、すべての教科で深刻な学力低下や自己肯定感の低下を招いてしまいます。小学校3年生頃には学習に自信をなくし、学校不適応の相談が増えます。そうなる前に、つまずきを早期に見付けて支援したいという思いから、学校の協力を得てひらがなに着目した支援を始めました。

メモ ひらがな読み調べについて

  • 調査結果に基づいて子ども支援室「ぬっく」と学校が連携。担任の先生と子どもの個別な対応について話し合う。効果的な指導方法や教材の紹介をしている。
  • 保護者向けの学習会「すくすくステップ」も開催している。
  • 小学校三年生には、ひらがな聴写テストが希望校のみ実施される。担任が読み上げることばを聞いて書いていく。ひらがなを「書く」力を確認し、子どもが苦手とする傾向をつかむ。

実施内容とスケジュール

7月 第一回目の「ひらがな読み調べ」

「せ」・「だ」・「ぼ」・「ぎょ」といったひらがな1文字を50個読む検査と短い文を音読する検査により、読みの状態を「読み誤り数」と「読み時間」で確認。

小学校に入学した一年生がひらがなを覚えたばかりの7月は、すらすら読めるのは半数。

10月 第二回目

経過をみる。

2月 第三回目

2月には約9割の子どもたちが読めるようになる。

メモ ことば遊びについて

  • 子どもが苦手とする拗音(小さいやゆよ)を練習するために「拗音カルタ」(例:きゃらめる みっつ もらったよ)や楽しみながらことばを育む「ことば遊びカード」を独自に製作。学校に教材として配布もしている。
  • 「拗音カルタ」は、全国自作視聴覚教材コンクールで入賞している。

紹介されている「ことば遊び」の例

ことばあつめ

「あ」のつくことば、などのお題を出して、同じ音で始まることばをたくさん考える遊び。

つながりことば

「あんぱん」、「あんぱんは甘い」、「甘いはさとう」など、関係することばや特徴を次々に考えていく遊び。

おりく(あたまとりことば)

お題「りす」の場合、「り」と「す」が頭文字になることばを考えて、「(り)っぱな、(す)もうとり」といったように答える遊び。

地域の広報誌にここまで具体的に載っていること、とても心強いですね。ちょっと気になるかも・・・?という段階で悩みの相談がしやすくなりそうです。家庭でも早くから気をつけて学習をみることができるし、試せる方法を知ることができるのでいいですね!

支援プログラムの内容はもちろんのこと、学習(特にひらがなの読み)につまずきがあることで自信を失くし、小学校3年生頃から学校不適応の相談が増えるというお話も気になりました。

読み書きの困難さと学校不適応。子どものメンタルヘルスに大きな影響を及ぼしていることがもっと注目されて、全国各地で理解と支援が早急に進んでほしいです。
相談してみても、ただ頑張らせる方向に指導が行われている自治体もまだ少なくないと感じるので、とても先進的だと感じました。

子どもの発達科学研究所 『文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究(令和6年)』
不登校のきっかけ要因に「学業不振」が4割程あるとのデータがあります。
文部科学省 『子供の自さつ等の実態分析(平成23年6月から平成25年末の調査)』
子どもの自さつ要因では「学校問題」が高く、中でも「学業不振」が一番高いという調査データがあります。

教育委員会

引用25ページ
小学校1年生7月に「ひらがな読み調べ(袋井市版)」を実施。
難しい特殊音節の習得のためにMIM(ミム)の指導を行い、動作化と視覚化で学習の基盤となる『読む力』をつける。「ことば遊び」、「物音かるた」、「読み聞かせ」で語彙を増やす。


引用12ページ
基本方針2 確かな学力を育む教育の推進
〈事業内容〉(3)読解力の向上
小学校1年生では、MIM-PMを活用した「読みのつまずき」に対応します。外部講師(静岡大学:坂口京子教授)を招聘して、読解力向上研修会を開催。

メモ MIM(ミム)とは?

  • 平仮名の特殊音節の読みに焦点を当てた、アセスメントと指導。
    全ての児童に実施して、通常の学級の中で学習面に困難のある児童を支援につなぐ。

取り組みについて紹介されている記事など

引用
市内の小学校1年生に対して実施している「ひらがな読み調べ」の結果と、その後の取組として「ことばを育むプログラム」を考案しました。子どもたちが楽しく遊びながらことばに親しむ教材として「拗音かるた」や「あそぼ」などの教材をつくり実践しています。

受賞理由として「幼児から児童期のことばの指導に焦点をあて、保育園、幼稚園、学校、家庭などが連携して、発達に沿った指導を展開し、子どもたちの学習活動の基盤を支える活動を実践している。」という評価をいただきました。

小林純代さん著書
気になる子も輝き出す!「ひらがな読み調べ」と「行動チェックシート」ではじめる学びと行動支援

メモ ひらがな読み調べについて

  • ひらがな読み調べは、鳥取大学の小枝達也先生のRTIモデルを参考にした読みのアセスメント。

小枝達也先生の著書
T式ひらがな音読支援の理論と実践ーディスレクシアから読みの苦手な子まで

メモ RTIモデルとは?

  • (=Response To Intervention Model)直訳すると、「介入・支援への反応モデル」
  • 通常の学級でクラス全員に支援・指導が行われ(一次支援:すべての子どもを対象にした予防)、介入後の反応から、学習につまずきが見られた子どもを対象に少人数での支援が補足される(二次支援:問題への初期対応)。さらにその次に、学びにくさを抱えている場合には個別に細やかな支援を行う(三次支援:徹底した個別介入)というように、段階的に支援が行われる。
  • 一般社団法人T式ひらがな音読支援協会のホームページに掲載されている、T式ひらがな音読支援の概要を説明した動画の中で、RTIについても説明がある。法人の代表理事は、小枝達也先生。
一般社団法人 T式ひらがな音読支援協会のHP
公益社団法人 子どもの発達科学研より 「RTIモデルで子どもの発達支援を行う」

  • 公益財団法人 博報堂教育財团
    袋井市子ども支援室「ひらがな読み調べ」から発展させた「ことばを育むプログラム」の推進

引用
音読が苦手な子の早期発見とつまずきに対する早期対応が可能になった。レベルに応じて音韻処理の練習とかな文字の解読の練習、さらに語彙の練習に学校と家庭が協力して取組み、結果、音読にかかる時間の短縮や誤読数の減少が見られた。

保育園、幼稚園、学校、図書館、家庭とが連携して、発達に沿った指導を展開し、子どもたちの学習活動の基盤を支える活動を実践している。個々の子どもの客観的な実態把握に基き、豊富な教材開発も行うなど、きめ細かく特色のある活動であり、今後も成果を挙げ、多くの地域のモデルとなることを期待したい。


引用
成果について
MIMデジタルは、(2021年1月)一人一台端末の整備が整ったとたんに大きな威力を発揮した。(1〜2年生はiPad。3年生〜Chrome book)特に児童の学ぶ意欲に対する効果は絶大だった。
課題と今後の取り組みMIMを低学年だけのものとせず、学校全体で組織的にMIMを取り入れていくことが重要である。
(中略)
しかし、MIMデジタルも幼小接続強化も導入すれば改善できる魔法のアイテムではない。その取り組みの元に目の前の子どもたちをどう指導していくか、学年団が熱意を持って日常的に話し合い、学習活用の修正・調整を重ねてきた事が大きい。幼小中一貫教育の中で教員が入れ替わっても持続可能なシステムを今後も皆の理解と努力で築いていきたい。

メモ (多層指導モデル)MIMの導入に関する概要

  • 袋井市では、2019年末iPadが6人に一台整備されたことを契機にデジタル版MIMが導入された。
  • 導入から数年経過しても理念が小学校教員に浸透していなかった。単に国語化の特殊音節の指導だと認識している教員もいた。
  • 理解を深めるために企画していた国立特別支援教育総合研究所の海津亜希子先生の講演会が新型コロナウイルスで不可能となり、リモート研修を打診。全国から依頼があったことから、児童の実態とその対応例を解説した動画のDVDが届く。全教員への研修が実現した。
  • 外国人児童も、MIM デジタルでのトレーニングに対しては意欲的な取組みを見せた。

2011年(平成23年)に「ひらがな読み調べ」から始まり、独自の教材製作、2019年(平成31年)には多層指導モデルのデジタル版MIMを取り入れるなど、多岐にわたる活動でどんどん発展して生まれたのが、袋井市の「ことばを育むプログラム」なんですね。

どの資料からも熱意が伝わってきて、子どもの応援団としての結束の強さをひしひしと感じました。どうか全国に広がってほしいです。(F)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次