『LDっ子の受験報告』は、LDのある子ども達の受験体験談をご紹介するコーナーです。合理的配慮のコーナーで載せきれない、さまざまな方の受験までの道のりをご紹介していければと思っています。
今回は、とり家の中学受験についての報告です。
科目を絞った中学受験
10月はディスレクシア月間です。
カラフルバードさんへの寄稿が、どなたかのお役に立てることを願い、今回はディスレクシア当事者である息子の中学受験について書きたいと思います。
昨年の今頃は、各学校の受験要綱も出揃い、第一志望校から第三志望校までは、算数理科、もしくは算数理科国語の3科目での受験を確定させた頃です。
とは言っても、この時点では過去問で合格最低点に届かず、とても不安になっていたのを覚えています。
結果的には、第一志望校から第三志望校まで合格をいただくことができました。
算数国語受験の第四志望校は残念ながら不合格、受験科目から避けた社会は、とても人様にお話しできる成績ではなかったので、息子の場合は、算数理科に振り切ってなんとか中学受験を乗り切った形となります。
受験記の趣旨としては、算数など得意科目に振り切って受験する方法もあるよ、ただし選べる学校は少ないよ。ということを頭の片隅に入れていただければいいので、こちらで読むのを終了しても大丈夫です。
この先長いので、お時間ある方は、お付き合いください。
受験時の読み書きレベル
漢字は小学2年生レベルがなんとか書けますが、2年生までの漢字も国と園など似た漢字を間違えることがあります。
普段の自分用のメモは、ほぼ平仮名です。「ほっかいどう」が「ほかいどう」となることも。
3年生以上の漢字も見て書き写すことはできます。
読みに関しては、長文を読むと疲れ、時間がかかります。推測読みのため、時々大ポカをすることがありますが、時間制限がなければ学年相当の文章を読み、理解することができました。
算数について
算数理科、特に算数を軸として受験校を探しました。
6年生時には、算数を得点源とすることができましたが、小学3年生時点では学校の授業についていけず、取り出し授業を受けていました。取り出し授業で追いつくことができ、4年生からはクラスでみんなと授業を受けていました。
なぜ中学受験に挑んだか
元々は公立へ進学希望でした。ですが、
在籍していた小学校が中学受験が盛んであったこと。
その同級生で地元公立校に進学する子は、勉強もスポーツもむしろ抜きん出ていた子達で、そのような子達が集まる地元中学で内申点が取れるのか不安があったこと。
中学受験であれば、ディスレクシアの子の多くが苦労する英語を避けての受験ができること。
読むことに非常に労力を使うため、4科目連続テストを受けると、最後はテスト中に気絶するように寝てしまうこともあり、科目を絞って受験したかったこと。
そして、落ちても公立中学があり、必ず行ける所があること。
以上から中学受験をすることにしました。
中学受験方針
・最終判断は息子に任せる
・ICTの活用を積極的に行っている
・理数系に強い、実験や考える授業が多い(手や頭を動かした方が学びやすいタイプのため)
公立中学に行く可能性もあるため、同時並行で情報を集め、絶対に悪口を言わないようにしました。(実際魅力的な公立中学なのです。)
また、受験の一番の目的は、自分で計画を立てて勉強できるようになることと伝えました。(親的には高校受験回避などもあるわけですが、全落ちが本当に怖かったし、実際計画立てて勉強できるようになって欲しかったので)
読み書き関連以外では、上記の他に、プール授業がない、共学、付属の場合は付属大学への進学率が低い方が良いなどいくつかの条件がありましたが、これは各ご家庭の教育方針や本人の性格によると思います。
最終判断は息子ですが、なるべく親が先に情報を集め、両親共にこの学校と教育方針が合わないと思った学校に関しては最初から候補から外しています。
ただ、受験科目を絞ると候補自体が限られるので、片方がOKであれば候補に入れて見学に行っています。
情報の探し方
①LINEオープンチャット、LD仲間の口コミ、STさん情報、塾情報、スクマ!等から、情報を得る。
②受験フェアで①の学校で個別相談をする。時間があれば他の学校も聞きまくる。
③②で良いと思った学校の説明会へ行く。
①②③の繰り返しで志望校を徐々に絞って行きました。
①の情報は玉石混合です。必ず自分達でも情報精査してください。
※LINEオープンチャット:
「雑談チャット」「ADHD/ASD児の中学受験 保護者相談室」など。匿名で参加でき、オープンチャット参加前の過去の話題も検索可能。
※スクマ!:
受験科目や、自宅最寄駅からの距離で検索可能。
※Googleマップ:
現在地自宅で「私立中学」で検索。自転車や徒歩の場合など思わぬ学校が通学圏内にある場合も。
質問の仕方、内容
入試や、入学後に個別配慮がなかったとしてもやっていける学校を探してたため、質問したことにより入試に不利に働くことや、落ちた時に質問したせいでは?と後悔する不安があったので、いずれも匿名、こちらからは障害名を明かさず質問しました。
息子の状況から読み書き障害を想定して説明してくださる学校もありましたが、担当の先生や学校により知識にかなりばらつきがありました。
「できない」ことを相談するので、できないことを何度も何度も聞くと子供の精神を削るので、障害対応関連は、親が単独で質問しました。
・先生:
課題や授業中のICT利用について(「コロナ禍で、タブレットを利用してノートテイクをするようになり、理解が深まった。同じようにICTを積極的に利用している学校を探しているが、利用状況を教えてほしい」)
漢字や漢字指定の問題以外の解答の採点基準(平仮名回答可能かなど)
※第一志望校は、息子の文字が読めるかどうか、模試の解答用紙を見せて確認もしてもらいました。
・保護者(PTA):
子供に不安がありPTAに入っている方や、普段先生にお世話になりまくっているので、文化祭など協力しますという方も多く、かなりの情報を持っている保護者がいる。
赤点を取った時の先生方のサポート情報等が豊富。
・生徒:
学校の好きなところや、宿題にかかっている時間。文字を書くのが苦手なのだけどタブレットの利用は実際のところはどうか?
勉強の仕方
塾
私に受験経験がなく、鶴亀算って何?状態、またフルタイム共働きのため自宅学習は無理だったので、塾にお願いしました。
前述の算数取り出し授業の経験から、少人数クラス、かつ検討している学校への合格実績がある塾をいくつか見学・体験授業を受け、その中から息子が気に入った塾にお願いしました。
ちなみに、気に入っても入塾テストで落ちた塾もあります。
早速中学受験の洗礼です。辛い。。。
最終的に入塾当初考えていた学校は受験しなかったので、特定の学校の合格実績はそこまで気にせずとも良かったと思います。
3年2月の入塾時から最後まで同じ塾にお世話になりました。
塾へは入塾時に読み書き障害があり、配慮入試を検討していること、そのため漢字に関しては書けずとも怒らないで欲しいことをお願いしました。
合わせて息子へは、「息子には漢字が不利にならない学校を探すが、受験で漢字が重要になってくる子達もいる。先生方はみんなを受験に合格させたいから、そういう学校をうける子達のためにも一生懸命指導されている。だから漢字について怒られても、あなたが怒られているわけではないから気にしないように」と伝えました。
※算数理科の2科目中心での受験を想定していましたが、募集要項が出揃う10月まで社会含め全科目受講してました。
志望校で社会がないことが確定してから、12月までは社会の授業は受けるが再テストは免除、1月は授業もお休みしました。
2024年も前年までの受験科目から変更がある学校が複数あったので、どうしても行きたい学校がある場合は、試験科目が確定するまで4科目受験の可能性も視野に入れておく必要があります。
自宅学習
・集中できる時間
疲れやすく、集中力が持たないので、25分勉強5分休憩をワンセットで計画。
複数セットできるようになったのは、6年生になってからですが・・・
・体験学習
形を捉えることが苦手なので、豆腐を切る。折り紙や空き箱で展開図を作る。粘土を積み重ね、等高線の幅の違いを理解する。地球儀と懐中電灯で星の動きを再現する。など、体感で理解できるように。
・復習ノート
なおしで、なぜ間違えたか具体的に書きメモ。最終的に一覧を作成。(我が家は親へLINEを送らせた)
ケアレスミス、計算間違いなど曖昧に書かず、3×7を間違えた(正3×7=21)と書く。九九の段階で同じ間違いをしていることに気づくことも。
いわゆる解きなおしノートは作らず。
・問題文から漢字を書き写す練習
漢字の形を捉えにくいので、部首だけは覚え(部首名は覚えなくとも良い)、問題文から漢字を書き写しできるようにし、平仮名ばかりの解答にならないようにする。
・語彙
Youtubeにある語彙動画を見る。
親が熟語集等を読み、普段の会話から使うようにする。塾の小テストなどと連動していればなお良し。
・あらすじ要約(ドラマ、ニュース、200字程度の文章など)
テレビドラマのあらすじや、人間関係、事件解決のきっかけや登場人物の気持ちを表したシーンなど、簡単にまとめる。
※特殊事情ですが、5年秋から私が病気によりテレビドラマの内容理解が難しくなり、また翌週には忘れてしまうため、一緒に見て説明してもらっていました。
勉強のためではなく、母に教えるためということもあり、質問をうるさがることなくドラマを楽しみ、読解力に繋がったと感じます。
※算数と理科に時間をかけていたので、国語に関してはなるべく机に向かわず、日常生活の中で身につけられるように意識しました。
過去問
過去問を解くと相性の良い学校が見つかると言いますが、思考力系、典型問題系の形式や、四谷大塚の偏差値表に載っていない所から上位校まで偏差値に関わらず、6、7割の正解率。
相性のいいところが分からない、どこも相性悪い。どこも受かる気がしない。と絶望的になってましたが、逆に考えると6.7割は解けているわけです。
合格者最低点の平均が6割なら合格です。
結果的に、偏差値順は第二志望(算理)→第一志望(算理)→第三志望(国算理)→第四志望(算国)→第五志望(算国・受験回避)でしたが、受かる可能性もどうも同じ順番という抑えが抑えにならない状況に。結果偏差値を見ると第二志望と第五志望で15以上差があるというのに(予測時点ではもっと差があった)
科目を絞ると、抑えを探せない可能性もあります。
ご縁はいただいたものの、かなり危ない橋を渡ったと思います。
未だ併願をどうすれば良かったのか正解は分からないのですが、もしも過去問で相性のいい学校がわからないという場合、正答率と比べて可能性を探るのも良いかもしれません。
ちょっとしたコツ、注意点
・受験票の名前の確認
息子は名前の漢字が思い出せず、時間のロスがありました。
受験票に名前が書いてあるので、子供と一緒に確認し、忘れたら見るように伝えましょう。
・付箋のり
付箋のようになる貼って剥がせるのりです。
受験票を机から落とす子も多かったようなので、受験票の裏に塗っておくと安心です。
・腕時計
アナログ式の腕時計を用意したところ、息子は読めませんでした。
デジタルとどちらが読みやすいか確認して用意しましょう。
・出願
2学期までではなく、出願日までの欠席日数を入力する学校がありました。
1月お休みさせる場合で、欠席日数を連絡が必要な学校受験の場合は、早めの出願をお勧めします。
願掛け
ディスレクシアに限りませんが、弱っている人の所には怪しい話がよってきやすいもの。
読み書き障害について色々行動を起こし始めた時の指針ですが、今回改めて、寄付をするなら日本赤十字社、神社仏閣はお賽銭お守り年始の厄除けまで、日頃からちょっと良い行いを心掛けることをしました。
2月1日、同じく受験生らしき女の子に電車の席を譲り、その時向かっていた学校も合格いただいたので、ちょっといいことは多分効きます。
とにかく何か課金したい、でも、これ以上は子供に無理させそうって時は、日本赤十字に課金の上、マッサージにでも行って落ち着きましょう。
前泊のホテルのグレードをあげるのもありです。
中学校生活
入学して半年が経ちました。
実は、個別配慮については相談はしているものの一切受けられてません。
ただ、元々がICT利用が盛んなことや、手書きでのノートテイクの場合も、先生作成のプリントへの空欄補充がメインであったりと、息子にとって格段に勉強しやすい環境が整っており、授業もとても楽しいとのこと。
漢字指定のある社会のテストだけはどうにもならないので、親としては本当にどうしようかなー…と頭が痛いところなのですが、提出物や普段の授業態度を評価いただいているようで成績自体は思ったより悪くありません。
個別配慮がないだけに、このままいくと大学受験時に実績を積めないままなのでは?などの不安はありますが、中高6年間あるので、焦らず交渉していくつもりです。
(とり)