公立高校入試における配慮申請のケースです。障害福祉課の合理的配慮相談窓口にも相談している点など、参考になります。
#21-①の方と同じ方ですので、基本情報は#21-①をご覧ください。
困り感 | 読み, 書き |
診断名 | LD(学習障害) |
学年 | 中3(2018年入試) |
自治体 | ー |
本人は配慮についてどう思っていますか? | 最初は小学3年だったので、あまり気づいていなかったと思うが、小学6年生くらいになった頃には、自分は配慮がないと勉強できないから、配慮が必要だと思うようになっていた。 |
公立高校入試における配慮申請の内容とその申請方法について | ★進学先の希望や在籍について 田舎に住んでいるため、近くに私立の高校はなく、公立高校への受検という選択肢しかありませんでした。息子は工業科のある高校への進学を望んでいました。 通常学級に在籍していて、特別支援教育支援員が、社会と国語、英語の時間に支援してくれるという状況でした。また、息子は通級に通うのが好きだったので、中学卒業まで通級に通っていました。 ★学校内での相談先(中学1年生〜) 母親である私が、中学1年生の時から配慮申請を受けたいという話を学級担任の先生や通級担当の先生にしていました。また、通級担当の先生には、中1の時から何度か配慮申請の話をしていましたが、まさかの「申請しない方がいいよ。」というアドバイス・・・。何度か話をしようと試みたのですが、あまりいい返事がもらえない感じだったので、通級担当の先生に相談するのは、中学2年生の時にやめました。 【中学3年生からの動き】 ◾️新たな相談先1(専門家の先生) 中学3年生になるタイミングで、配慮申請のアドバイスにのってくれる人がまわりにおらず、何とかしなければいけない・・・と思っていた時に、発達障害関連のセミナーで、隣の市(隣の県)に専門家の先生がいるらしいという情報を得ました。国立大学の教授だった先生で、個人で教育相談所をやっておられます。 この先生に連絡をとり、早速面談をしていただき、その数日後には、春休み中だった息子にK-ABCⅡ検査をしてもらうことができました。検査の結果からは、やはりかなり読み書きが大変だということが分かりました。読むことは、小学1年生よりも遅いなどの結果が出て、結構深刻だなと思いました。 この先生から色々とアドバイスをいただき、病院に行くことになりました。 ◾️新たな相談先2(病院:公立病院の小児科) 以前に一度だけ、小学5年生のときに学習障害の診断を受けた病院に行って、今までの検査結果などを示すと、お医者様からコンサータを飲んでみないかと提案されました。(ちなみに公立病院の小児科です。) そこから、月1回の通院が始まります。今にして思えば、この通院が受験の配慮申請に大きく直接関与したと思います。 実は主治医の先生は、あまり学習障害についてはご存じなかったようで、あるとき先生の傍らに置いてあった本をみかけて、ちょっと主治医の先生の持つ専門知識に心配になりました。その時、私が買ってたまたま持っていた、竹田契一先生のLDについて書かれた本を「病院に寄贈しますから、ぜひ読んでみてください」とお渡ししました。主治医の先生は、とてもやさしい心の広い方だったので、快く受け取ってくださいました。 ◾️志望校の決定、学校に再打診(中学3年生の12月〜1月) 中3の12月の三者面談で、本人の志望校が決定しました。 その時も、配慮申請について学担の先生にお話したのですが、何となく具体的に話が進まないまま、1月になってしまいました。もう、特別な配慮の申請はとっくに始まっていたので、1月の中旬になってから、私の方からどうなっていますか。と学校側に打診の電話をかけました。 特別な配慮の申請は、個人で出すものではなく、在籍している中学校が出すことになっているので、学校に動いてもらわなければなりません。 ◾️専門家の先生に相談、病院で診断書をもらう、申請資料の提出(1月末) 上記の直前に、前述の専門家の先生に相談しました。隣の県なので、私たちの住んでいる県とはちょっと違うようだったのですが、まず基本的にこうしたらよいのではないかというアドバイスを頂きました。 一番の大きなアドバイスは、「病院の主治医の先生の診断書をもらいなさい。」ということでした。 うちの公立高校の受検における特別な配慮の申請の書類には、「病院の診断書は必要ない」と書いてあるのです。診断書がなくても、申請は出来るのです。中学校の先生からも、その話をされていたので当初、診断書は取らないでいました。ただ、主治医の先生も息子のことをとても心配してくれていて、何かあればすぐに診断書を出してあげるよ。とも言ってくれていました。 専門家の先生からアドバイスをもらった後、すぐに主治医に診断書をもらいに行き、中学校に提出しました。そして、配慮の申請書類に診断書を添付することを明記してもらうことにしました。1月末にようやく中学校側が書類を完成させ、県教育委員会に提出してくれました。 <診断書の内容> 診断名 発達性読み書き障害 高校受験において、代読および全漢字にルビの使用、検査時間の延長、拡大文字の使用、別室などの支援が必要。 (中学校で行ってもらっていた支援を全部書いてくださいました。) ◾️県庁の障害福祉課へ相談 ここまでに、中学校側となんかうまく物事が進まないことに非常に不安を覚えた私は、県庁の障害福祉課に電話しました。本当は、直接県庁の窓口にいくべきだとは思ったのですが、私の住む地域からは車で雪道を2時間運転しなければならなかったので、電話にしました。うちの県の場合は、障害福祉課は「合理的な配慮」の相談窓口になっていると県庁のHPにありました。担当者の方に、合理的な配慮の窓口ですよねと確認してから、これまでの経緯を説明して、県教委の担当部署に電話してもらうことにしました。 その後、障害福祉課の担当者の方が、実際に県教委の担当部署に連絡を入れて下さり、今度は私のもとに直接県教委の担当部署の方から電話を頂くことが出来ました。私は法律にのっとって、申請しているのだということを県教委にわかってもらいたいという気持ちからでした。また、もう受験まで1カ月しかないこのタイミングで、うまく物事が進まないということは、絶対に避けたかったのです。 この一連の連絡がつながったことで、少し私の気持ちも落ち着きました。 ◾️志望校と中学校との話し合いが難航、配慮内容の決定(2月末) 配慮申請の提出後、今度は志望高校と中学校との話し合いが始まりました。 実際には、県内ではほとんどない申請だったようで、協議が難航したようです。 表向きは、志望高校と中学校側で話し合うということになっているのですが、実際には「県教委の担当者」がきて、「中学校の学級担任の先生と息子の担当をした支援員」「高校」とで3者協議をしたようです。 1回目で決まらず、2回目の協議には、中学校校長も話し合いに行ってくださったとのことでした。 息子は小学校の時から、通級にも通い、テストの読み上げをしてもらっていて、テストに振り仮名も振ってもらっていて、今までに十分実績があったのにこれだけ時間がかかるというのは、正直驚きました。 2月の中旬になっても、配慮が決定しないという状況でした。やはりもっと早く申請しなければならなかったのに・・・という思いでした。 中学校の校長から、職場にも何度か直接連絡が来て、この部分の配慮は具体的にどうしてほしいのかという質問もありました。とにかく時間がないという印象でした。結局、3月上旬が受験日でしたが、2月20日ころにようやく受験時の配慮の内容が決まったと、学校長から連絡が来ました。2月末にようやく決定書が中学校に届きましたが、中学校校長あてに来たものだからということで、ちらっと見せてもらいました。(写真撮影・コピーなどは不可と言われました。) 【受験時の配慮内容】 受験時の配慮の内容(決定事項)は、 1.別室受検 2.問題用紙は元の片面A4を片面A3に拡大し、手書きで鉛筆のHBで総ルビ振り。(問題にかかわる部分はもちろんルビなし)。 →問題用紙のレイアウトが崩れるので、活字でのルビふりはできないとのこと。 →社会などの図表についてもルビをふってもらうことが出来た。(かなり細かいところまでルビをふってくれた。) 3.時間延長 各教科10分ずつ。 4.人による代読 →受検者が口頭でお願いした部分を読む形 (代読者が具合悪くなったことなども考慮され、試験では代読者が2人配置されたとのこと。) →国語で漢文が出題された場合は、その文章は読まない。 →数学や理科の様々な記号は、すべて「記号」とよむこととする。 →英語の英文は読まない。 →英語の問題文の日本語については、注釈も含めて総ルビ。 ・・・などと、色々なことに対して細かく決まっていた。 5.大きい机を用意してもらうこと。(会議用テーブル2つ分) 問題用紙の大きさは、こちらの希望では片面B4にしてほしかったのですが、手書きで総ルビにする関係で片面A3にするのは譲れないといわれました。仕方ないので、その後、中学校で過去の問題用紙を片面A3に拡大してもらい、家で何度か練習しました。 また、解答用紙については、他の受験生の解答用紙と混ぜて誰のものかわからない形で採点するので、ルビはふらないし、配慮はできないとの事でした。(解答用紙の漢字については、読んでほしいとお願いすれば読んでもらえるとのこと。) 幸い、書くだけならひらがなばかりになりそうでしたが書けるので、仕方ないと思いました。 実際の受検では、1教科だけ本人が気後れして一切代読してもらわなかった教科があり、非常に心配しましたが、何とか合格できたので、ほっとしました。 主治医の先生が出してくださった診断書があったからこそ、ここまでの配慮が受けられたのではないかと思いました。 【高校入学後の様子】 高校では支援員さんはいません。iPadの持ち込みは学校から許可をもらってありますが、まだ本人は使っていないようです。 定期テストの配慮は引き続きやっていただいています。ただし、試験監督者が代読するというのはできないとのことで、本人と特別支援教育コーディネーターの先生とで話し合いの結果、iPad(自前)に試験の問題データを入れて読み上げさせているようです。試験期間中は、iPadは学校で預かり、試験データの漏れを防ぐことになっています。また、試験時間も各教科10分延長、別室でテストを受けさせてもらっています。 高校の先生方が非常に協力的で、いくつかの教科書の電子データをもらうことができました。 |
配慮の実施のために診断書や医師からの意見書を求められましたか? | 求められていないが、提出した。 |
その他 | 今後、高校受験などをするお子さんや親御さんに知ってもらいたいと思い、情報提供しました。 |
この情報の確認時期 | 回答時期:2023年8月 入試は2018年です。 |
引き続きデータバンクへの情報提供を募集しています。些細なことでもいいですので、ぜひ情報提供へのご協力をお願いいたします。