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「できない」から「どうしたら学べるか」

おことわり!
LDの状態は多種多様で、誰一人同じ状態はありません。こちらで紹介するのは、あくまでも「うちの子」の場合の学び方です。ご自分のお子さんにぴったり合う方法ではないことの方が多いと思いますが、学び方の一つの選択肢としてご紹介します。「多様な学び方がある事を知るきっかけになってもらえれば」、「学び方の引き出しが1つでも増えれば」と思って運営しています。その点をご了承のうえ、あくまで参考程度にお読みください。

目次

【自己紹介】

はじめまして。「きのこ」です。子どもは4人。1番目と2番目は小児の作業療法士。母である私は、発達支援を仕事にしている公認心理師です。そして、4番目の子どもは、通常級に在籍する中学3年生のLDです。我が家には、スパルタで昭和な考え方の父、読み書きのサポートを一緒にしてくれるOTの兄と姉がいます。母は、仕事柄、発達支援の中で「マイノリティ」と呼ばれる子どもたちと出会うことが多く、我が家ではいつの間にか、マイノリティがマジョリティになっています。そんな我が家の4番目の子どもの「学び」について、今回は書いてみたいと思います。

【はじめに】

4番目の子どもには、小学1年生の頃から読み書きのつまずきがありました。専門機関で評価を重ね、小学5年生でLDの診断を受けました。診断を受けたことは本人にも伝え、その頃から家族で大切にしてきた合言葉があります。

「学び方は人それぞれ。自分に合う学び方を探そう!」

小学校では、SENSの資格を持つ校長先生が担任のサポートをしてくださり、医療機関や通級指導教室とも連携しながら学校生活を送ってきました。5年生からは、iPadをノートの代わりに使うようになりました。でも、そこにたどり着くまでには、たくさんの「できない」という経験がありました。

その一つが、漢字50問テストです。

宿題で何度もノートに漢字を書いても覚えられない。勉強しているのに、テストの点数につながらない。3、4年生の頃には、「勉強しても、どうせ点数は取れない」という気持ちを抱えていた時期もありました。そこで、「もっと書いて覚えよう」とするだけではなく、約2年間かけて、本人に合う漢字の覚え方を一緒に探しました。

漢字の部首を色鉛筆で分けてみる。
音読みと訓読みを見分けるシートを作る。
折り紙に漢字を書き、パーツごとに切って組み合わせる。
アプリを使って、ゲーム感覚で漢字を学ぶ。

いろいろな方法を試しながら、「自分は、どうすれば覚えやすいのか」を本人と一緒に探していきました。そして、合格点である80点を取れるようになると、担任の先生も積極的に漢字50問テストの「作戦会議」をしてくださるようになりました。

親だけではなく、学校の先生と一緒に、自分に合った方法を考えられるようになったのです。そして卒業前、親以外のサポートを受けながら、最高点となる98点を取ることができました。この98点は、単なるテストの点数ではありませんでした。「自分は勉強してもできない」という経験から、「自分に合う方法なら、できることがある」という経験へ。

その経験は、本人の自信につながりました。そして、この経験が、後の英語学習にもつながっていきます。

5年生から導入したICTの活用は、私たち親にとっても大きな転換点でした。「みんなと同じ方法でできるようにする」のではなく、「どうすれば、この子が学びやすくなるのか」を考える。そして、「学びの本質は何なのか」を優先する。親である私自身も、少しずつ考え方を変えていきました。中学校では、英語という新しい教科に向き合うことになりました。英語には、読む、書く、音と文字を結びつける、単語を覚えるなど、LDのある子どもにとってさまざまな負荷があります。それでも、ICTを活用した読み書きへの支えや、学校での合理的配慮があることで、本人は中学校生活を送ることができています。

今回は、そんな次男の英語学習を通して、LDの子どもにとって、英語を学ぶことにはどんな難しさがあるのか。学校の先生と、子どもの「困りごと」をどのように共有していくのか。合理的配慮によって、何が変わるのか。そして、自分の認知特性を知り、自分に合った学び方を自分でも説明できるようになってきたこと。について、我が家の経験を通して書いてみたいと思います。

【英語学習と合理的配慮】

中学校に入り、次男が新しく向き合うことになったのが「英語」でした。英語の学習が始まると、小学校までとは違う難しさが見えてきました。

まず、アルファベットの高さや向き、文字の形を捉えることに難しさがあります。さらに英語は、日本語のように「見た文字をそのまま読めばよい」というわけではありません。綴りと音の対応には複雑さがあり、次男の場合、黙読するとローマ字読みになってしまうため、正しい音と単語を結びつけて覚えることが難しくなります。読むことに負荷がかかると、自分で教科書や問題を読み、一人で学習を進めることも難しくなります。そして次男の場合は、読むことの負担だけではありません。手先の不器用さもあるため、読むことに時間がかかるうえに、英語を書かなければならないとなると、学習への負荷が一気に高くなります。

「読めない」
→「一人で学習しにくい」
→「書くことにも時間がかかる」
→「思うようにできない」
→「英語が嫌いになる」

そんな負のループに入り始めていました。さらに思春期を迎え、「教室で自分だけ違う方法で学習する」ということも、本人にとって大きなハードルになっていきました。「みんなと同じようにする」ことが暗黙のルールになっている教室の中で、自分だけ学び方が違う。そのことに、本人が罪悪感のようなものを抱いているのではないか。親子で話し合う中で、そんなことを感じる場面も増えていきました。

【合理的配慮も「試行錯誤」の中で】

次男の認知特性や困っていることを学校と共有しながら、「どうすれば学習に参加しやすくなるのか」を一緒に考えてきました。

読むことの負担には、読み上げを活用する。
書くことの負担には、ICTを活用する。
時間が必要な場合には、時間を調整する。
必要に応じて、学習する環境を整える。

そうやって、本人に合った合理的配慮を少しずつ整えていきました。特に定期テストについては、最初から今の方法ができていたわけではありません。

「ルビをつけてもらう」
→「問題用紙を拡大してもらう」
→「問題と解答を一緒にしてもらう」
→「解答用紙を拡大してもらう」
→「GoodNotesを使用し、端末上で回答。持ち込みのプリンターで印刷して提出する」
→「ロイロノートでPDFデータを受け取り、私物のiPadで回答してUSBに入れて提出する」
→「学校のChromebookで『もじソナ』を使って問題を読み上げ、私物のiPadで回答を入力し、USBで提出する」

ここまで来るのに、約2年間の試行錯誤がありました。その時々の困りごとを確認し、実際にやってみる。うまくいかなければ、また方法を変える。

合理的配慮は、一度決めたら終わりではなく、その子の成長や困りごとの変化に合わせて、一緒に調整していくものなのだと、この2年間を通して実感しています。

【自分のことを、自分で説明する】

そして、この2年間で変わってきたことが、もう一つあります。それは、次男自身が、自分の認知特性を少しずつ理解するようになってきたことです。

「僕は読むことが苦手」
「読み上げがあれば理解しやすい」
「書くよりiPadの方が、自分の考えていることを表現しやすい」

自分の得意なこと、苦手なこと、そして自分に合う方法を、少しずつ言葉にできるようになってきました。これは、大きな成長だと思っています。でも、自己理解が進めば、すべてがうまくいくわけではありません。時には、「LDだからできない」と、自分の特性を「できない理由」として使うこともあります。それも含めて、自分の特性との付き合い方を学んでいる途中なのだと思います。

大切なのは、「LDだからできない」で終わらないこと。

「では、どうすればできるのか」
「何があれば、自分でできるのか」

を考えていくこと。そして、必要なときには、「僕はこれが苦手です。でも、こうすればできます」と、自分のことを自分で説明できるようになること。

合理的配慮は、周りの大人がずっと用意してあげるものではなく、いつか本人が自分の学び方を選び、自分に必要な支援を伝えていくための力にもつながっていくのだと思います。

【「できない」から「どうしたら学べるか」へ】

振り返ってみると、漢字50問テストで98点を取った経験も、今回の英語の経験も、根っこにあるものは同じでした。「みんなと同じ方法でできるようにする」のではなく、「この子は、どうすれば学べるのか」を考えること。そして、本人自身も、「自分はどうすれば学びやすいのか」を知っていくこと。私たち親子が大切にしてきた合言葉があります。「学び方は人それぞれ」そして、これからはもう一つ。

「自分のことは、自分で説明する」「できない」をなくすことではなく、「どうすればできる?」を一緒に探していく。その経験が、次の「やってみよう」につながっていくのだと思います。

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