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河野 俊寛先生【カラフルバード応援メッセージ】

河野 俊寛 先生
北陸大学 国際コミュニケーション学部 心理社会学科 教授

 優しい語り口調とわかりやすい言葉、データに基づくテンポよい説明で進む各種講座は、受講者から「受けてよかった!」と大好評。子供の書字の発達研究、文字の読み書きやコミュニケーションに困難がある子どもに対してのテクノロジーを活用した支援臨床がご専門。獣医師、言語聴覚士、中学校教員、特別支援学校教員など、多彩な資格、経歴の持ち主。URAWSSⅡ、URAWSS-Englishの開発者。平林ルミ先生との著書『読み書き障害(ディスレクシア)のある人へのサポート入門』(読書工房・2022年)は手元に置いておきたい一冊。

博識高く、それでいて温かく、LDの子どもたちの置かれている状況をもしっかりとご指摘してくださっている深いメッセージに、メンバー一同、涙しながら口をそろえて「ほんとそれ!」と声が出ました。
引き続きどうぞよろしくお願い致します。

目次

河野 俊寛先生 応援メッセージ

 「知識は力なり」という格言があります。哲学者フランシス・ベーコンの言葉とされますが、ベーコンが自著の中で一字一句そのまま書いているのではなく、ベーコンの思想を端的に表した言葉のようです。「知は力なり」という訳語もあります。しかし「知」の部分の元のラテン語はscientiaで、「知」から想像される知恵や知識等の広い意味ではなく、知識(知ること)という狭義の意味に限定されるようです。多くの知識を身につけることは力になる、ということでしょうか。 
 現在はスマートフォン一つで、さまざまな知識を得ることができる時代です。その点ではフランシス・ベーコンの時代とは大きく異なっています。それでも、知っていることが大きな力であることには違いはないでしょう。しかし、学習障害(LD)についての「知識」は、その知識がどこにあるのかも含めて、特に支援者からは積極的に求められていない現状があるのかもしれません。それは、学習障害は「学習」の「障害」であるので、「知的障害」と同じ困難ではないか、と漠然と想像されることから、新たな知識は不要である、と思われてしまうからかもしれません。しかし、学習障害と知的障害は別の障害です。学習障害は,学習の道具である文字の読み書きと計算が、流暢に正確にできない、という障害です。少しは読み書き計算ができるので、正確に流暢にできないのは努力不足と見られることも多くあります。支援のための新しい知識を得るのではなく、多くの子どもたちと同様に「繰り返し練習」さえすればよい、と考えられてしまうのかもしれません。
 また、学習障害は、自閉症スペクトラム障害や注意欠如多動性障害のような行動の障害ではないので、周囲の子どもやおとなが大きく困る、という経験をすることが少ないことが、新しい知識の必要性を感じることが少ない原因の一つかもしれません。しかし、学習障害の子どもたちは、小学生の段階で約10%が、中学生の段階では約50%が不登校になってしまっている、という研究報告があります。自分一人でひっそりと困っていて、ある日、ついに力尽きてしまうのが学習障害です。 
 カラフルバードのHPには、多くの知識が載せられています。多くの当事者や保護者や関係者がその知識を獲得し力とすることで、学習障害の子どもたちが力尽きてしまう前に救うことにつながるのではないでしょうか。カラフルバードのHPには、当事者、保護者、学校関係者、医療関係者などが力を持てるように、今後も正しい知識と新しい知識の集約を期待します。 

北陸大学 河野 俊寛  

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